防衛ど素人が平成28年版防衛白書を読んでみた

⬛︎はじめに


仕事の忙しさを言い訳にして、いい歳になってきているのに全く年齢相応の一般常識が足りてない。。。
そんな思いもあって、夏くらいは戦争や歴史について考えようと昨年くらいから少しずつ戦争映画を見たり、ドキュメンタリーを見たりするキャンペーンを自分の中で実施している。

今年はニュースから流れてきた「防衛白書」という単語がふと耳にとまった。白書っていうことは役所が発行してるんだよな、自分も読むことができる代物なのかな?と気になったので、全くの知識ゼロ、どころか軍事オタクしか足を踏み入れられないものとしてむしろ避けてきた防衛の世界をのぞいてみることにした。
平和安全法制とか集団的自衛権とか全然話についていけてなかった後ろめたさを、白書を読むことによって挽回できないかとも期待。

 

⬛︎どうやったら防衛白書って読める?

何も考えず、まず「防衛白書」で検索かければ一発で出てくる。
防衛省のホームページで公開されていて、最新の平成28年版を誰でも読める。
PDFバージョンもあるので、ダウンロードしていればネットのつながらないトンネルの中でも読める。

 

⬛︎防衛白書の中身

目次は↓こんな構成になっていて、
①平成28年度版防衛白書の刊行に寄せて(中谷防衛大臣(当時)のあいさつ)
②巻頭特集 日本の防衛 この1年間
防衛白書ダイジェスト
防衛白書本編
の順になっている。

読んでみるとわかるが、①→②→③→④の順に後半に行くにつれて内容が具体的になり、詳しくなっていく。
今回は防衛ど素人なので①、②、③まで読んでみた。

 

⬛︎早速読んでみて、ざっくり要約

  • 周辺諸国、というか北朝鮮、中国、ロシアが軍事的な挑発行為、領海・領空の侵害行為を頻繁に繰り返しすぎ!危ない!戦闘機の緊急発進回数なんて冷戦時並みに増えたぞ!
  • というわけでアメリカの存在をもっとチラつかせて「こっちくんな!」と抑止しなきゃいけない。それが平和安全法制を作った背景だ。
  • それと防衛って金かかるんすよ。なので組織替えたり、装備品の調達方法を見直したりして効率化してまーす。防衛装備庁ってのも新設したんでよろしく!
  • あと、自然災害多いっすよね。引き続き頑張って対応します。熊本地震防衛省自衛隊から延べ80万人以上を投入して本気出しました!
  • 日本も危ないんすけど、海外も大変なんで手伝いにも行ってます。ソマリア沖の海賊とか日本行きの船襲ったりするからありえない。

 

⬛︎感想と防衛ど素人なりの解説

ざっとまとめると↑こんな感じ。
結構前提知識がなくても分かりやすく、ふむふむと納得しながら読めたというのが率直な感想。(知識が足りなさすぎて、単に書いてあることを鵜呑みにしてるだけかも。。。)
全く得体の知れなかった「防衛白書」というものが、思ったよりも分かりやすい防衛省の取組報告書であることがわかった。

 兎にも角にも、”北朝鮮”、”中国”、”ロシア”の動きが正常な状態とは言えない、というのが防衛白書が伝える大前提となっている。

この大前提を伝えるニュース(北朝鮮の核実験とか、中国船が日本の海域に侵入してきたとか)は今までも確かに見ていたし、知っていたが、防衛ど素人からすると、なんだかありふれたニュースのような気がして、ふーんと流していた。

しかし、具体的なデータを見るとはっとさせられた。
(緊急発進回数が冷戦並みになっているグラフ)
例えば、このデータは領空を犯そうとする戦闘機を追い払う目的で航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した回数をまとめたものだが、近年急速に増えてきた結果、冷戦時並みになっていることがわかる。いつ核戦争が始まるかとにらみ合いをきかせていた時代と同じ水準になっていることが、ここ最近の状況がおかしくなってきていることを示している。

防衛白書中で何度も出てくる言葉なのだが、領海や領空を犯したり、急に島を埋め立てて軍事拠点を作ったりする動きを”現状変更”と呼んでいるみたい。

なんか普通の言葉なので緊張感に欠けるが、本当に繰り返し繰り返し書かれていた。
”現状変更”、覚えておこう。

 また、そこまで書いちゃっていいの?と思ってしまう箇所もあった。

(ダイジェスト第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組 ”島嶼防衛”より引用)
「事前に兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、陸・海・空自が一体となった統合運用により、部隊を機動的に展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する。島嶼への侵攻があった場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼奪回のための作戦を行う。」

要は「来たら叩きつぶすぞ」ということで非常に頼もしい。
でも、正直なところ、ここまではっきりと軍事力を使って防衛すると明言してあるのには驚いた。もっと濁して書いてあるものかと。

 平和安全法制については、巻頭特集で取り上げられており、ダイジェストでも前提となる考え方や現状の解説が繰り返し書かれているため、わかってきたが、集団的自衛権の話がどう絡んでいるのかは防衛白書の内容だけではわからなかった。(ダイジェストまでしか読んでないせい?)

あと、項目としては宇宙とサイバーも書いてあったが、一般的なことしか書いてなくて、具体的に何をやっているのかわからなかった。
とはいえ、
(ダイジェスト第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組 ”サイバー空間における対応”より引用)  
自衛隊指揮通信システム隊が24時間態勢で通信ネットワークを監視しているほか、情報通信システムの安全性向上を図るための侵入防止システム・防護システムの整備、サイバー攻撃対処態勢や対処要領を定めた規則の整備、人的・技術的基盤の整備、情報共有の推進、最新技術の研究など、総合的な施策を行っている。」
らしい。何を監視してるだろう?

 

⬛︎終わりに

改めて防衛にも興味を持って接しないとダメだなと感じた。
防衛白書の内容が頭に入ったことで、ニュースで伝えられていることが理解しやすくなったし、憲法の解釈の問題などにも興味が広がってきた。

一部の偏った思想の人たちだけのものだと思って敬遠していては、本当に安全な社会を得られない。少なくとも内容だけでも理解しておき、おかしな方向に進んでいくようなら自分の意思で行動に起こせるようにしないと。
SEALs見て、「若いにいちゃんとねえちゃんが出会いを求めて集まってるなー」なんて思って考えるのを停止してたことをちょっと反省。


防衛ど素人だけど、ほんのちょっと知識がついたのと「防衛白書」というエビデンスをおさえたのとで、テレビのコメンテーターとかが適当なことを言ってないかチェックしたい衝動に駆られてる(笑)
「お前ら、ちゃんと防衛白書読んでんのか!」と先輩ヅラして突っ込んでしまいそう。

 

⬛︎おまけ

読みやすいとは言っても、やはり全然知らない用語や意味のわからない表現は出てくる。
↓こんな感じ。一般の人はいくつわかるのかな〜(笑)

 

統合幕僚監部
統合的見地
PAC-3部隊
即応予備自衛官
PFI方式
国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)
自衛隊観艦式
登舷礼
現状変更
アセット配備
リバランス
航行の自由作戦
第3のオフセット戦略
通常戦力
非対称的な軍事能力
並進路線
A2/AD(Anti-Access/Area-Denial)
中国公船
C4ISR
統合機動防衛力
統合運用
精強性
シーレーン沿岸国